若干。
現地の事前下見は大抵省略し、かわりに経験豊富な隊長が、万全の準備を整えます。
大規模な、あるいは特殊な調査の場合は下見をすることもあり、必要に応じてヘリコプターでの下見もおこないます。
最近では、無人航空機(ドローン、UAV)を飛行させる事が多くあります。
1日ないし数日間。
できるだけ短期間で集中して済ませるのがコツです。 そのために十分な準備を整え、1日の作業時間もフルに活用し、室内作業でカバーできる作業は室内作業に回して現場作業効率を高めます。
下見、打合わせ、準備、そして作業着手。
2日目以降、調査継続。
最終日、調査終了、撤収。
通常、2〜4週間程度。
現場作業を短期間で済ませた分、室内作業に手間をかけます。
各担当者ごとにデータを整理・解析。
そのうえで、隊長が総合解析し、成果品を取りまとめます。
なお、現場作業終了時点で、野帳等をもとに、調査結果速報を仮提出することも多いです。
前日乗り込み、下見。 もしくは当日早朝に京都発。
移動手段は、車両(ひとチーム1台)、もしくは公共交通機関(荷物20〜30kg/人)
下見
30分程度。
調査個所やその周辺を各自で遠望し、必要に応じて調査作業用のスケッチを作成します。
隊長(チームリーダー)は調査上のポイントを遠望等で見極め、作業が効果的かつ効率的に進むように作戦をたてます。
調査前に無人航空機(ドローン、UAV)を飛行させ、調査範囲・ポイントの確認を行います。
30分程度。
調査の目的を再確認し、全員の意思統一をはかります。
まずは安全確保で、作業範囲の上・下方への部外者の侵入防止、通行規制などを確認します。
調査作業については、作業分担、調査測線、手順等を確認します。
最後に無線機の作動チェックを各自でおこないます。
遠景マン(支援要員)は、現場全体を見渡せる場所に遠景撮影機材を持ち込み、陣取ります。
カメラは通常、超望遠(800 mm程度)、望遠(400 mm程度)、標準、の3セットもしくは同程度の機能を一括で有する最新カメラを配置します。
ロープユーザーはロープアクセス装備と調査器材を装着(20分程度)したうえで、所定の長さのロープを携行し、各自の担当する調査測線上端に徒歩等で移動します。 この際、遠景マンに無線誘導してもらうこともあります。
無人航空機(ドローン、UAV)を飛行させ誘導することもあります。
測線上方に到着次第、支点となるしっかりした木の幹等を2箇所以上選定し、仮荷重テストの上、ロープを結束します。
つぎにロープに下降器をセットし、作動チェックで装備や支点が安全にセットされていることを最終確認します。
ロープに体重を預け、後ろ向きに、慎重に下降を開始します。
法肩(法面の肩部)では、ロープが肩部にこすれやすいので、立ち木等を利用して、リビレイや、ディビエーションなどのロープ技術で、ロープが肩部にこすれないように工夫します。 これらのロープ技術は、ロープにかかる荷重を分散させたり移し変えたりするのにも有効で、うまく活用して万が一にもロープが切れないように、何重にも安全を確保します。
また、ロープが法面にどうしてもこすれる場合は、ロープガードを使ってロープを保護します。
下降しながらの横断測量も開始、50m程度の巻尺を測線沿いに張り、クリノコンパスと合わせて地形横断図を作成していきます。
ゆっくりと下降しつつ、調査測線を中心に、両側の法面の状況に注意を払います。 亀裂などの変状調査では単に亀裂の分布と開口幅を記載していくだけでなく、亀裂開口のセンス(右ずれ・左ずれ、オーバーラップ等)から地山岩盤の崩壊兆候や規模、メカニズムを総合的・対極的に読み取ります。 空隙有無の判定は打音調査だけでは誤認することが多く、重ね吹きによる空隙(異常)音や吹き付け厚が20cm以上あったり、力一杯たたかないと空隙でも正常音のケースがあります。 また空隙が吹き付けコンクリート(やモルタル)の直背面ではなく、10cmから20cm奥の地山岩盤中に形成されているケースも少なくないです。
コア抜きや弾性波探査、あるいは亀裂変位計などの計測機器設置を法面斜面上の最適・任意の位置でおこないます。
位置の特定には横断測量だけでなく遠景マンとの連携も有効で、この際、遠景マンが、変状等とクライミング調査員を写し込んだ遠景写真も撮影します。
作業が終わり次第、下降を再開し、調査を繰り返します。
調査時の下降ペースは50mあたり1〜2時間で、準備作業も含めると測線長が50mとすると、1日当たり2測線が目安です。 測線長が30mだと1日3測線、100mだと、1日仕事です。
測線沿いにカバーできる幅は、調査精度や現場条件にもよりますが、左右各2〜10m、計5m〜20m程度で、ロープユーザー自身が振り子状に左右に移動し、より広い範囲をカバーすることも可能です。
測線下端に到着次第、下降システムを登高システムに切り替え、同じルートを登り返します。
この際、リビレイやディビエーション、ロープガードなどのセットを順次、解除・回収していき、同時に、登り返しながらの補足調査もおこないます。
登高ペースは20mあたり5分程度で、複数の登高器を組み合わせて、腕力ではなく、脚力を使ってリズムカルかつ軽快に登高します。
測線上端に戻り次第、支点を解除し、ロープをロープバッグに回収し、次の調査測線に移動し、調査作業を繰り返します。
安全上の資質や意識の高い者のみを選定しています。 もちろん日々の安全教育も徹底し、安全意識の更なる向上をはかっています。
作業体制ロープユーザーは、全員有資格者で、ロープアクセス調査技士の資格を有します。
ひとチームは2名以上で、万が一のレスキュー体制も前提に編成します。
指揮系統は隊長(チームリーダー)に集約し、チームとしての安全判断を下します。 さらにチーム員ごとの独自の安全判断も同等に尊重します。
ロープアクセス技術や器材は、所定の定められたものに限定します。
ちなみに一般的なロッククライミング(厳密にはアルパインクライミング)技術・器材の大半は、安全上、使用禁止です。
個人装備は各個人が責任を持って管理し、落下させるなどして損傷の疑いの生じた装備は即、廃棄します。
ロープなどの共同装備は鍵のかかった管理場所に保管し、日常的な点検を怠らず、損傷や劣化があれば廃棄します。
採用しているロープアクセス技術はいわば夜間・全天候型で、嵐や吹雪など、どんな悪天候や、洞窟などの暗闇においても安全に作業できます。
墜落事故および落石・落下物事故の防止:原因と対策を表5−1にまとめます。
原因 | 対策 | |
墜落 | ロープ固定ミス | 結び目確認 結束作業中に話しかけない 結束後の指差し確認 |
下降支点の脱落 | 下降支点は必ず2箇所以上に作る | |
下降器やハーネスの誤装着 | 装着作業中に話しかけない 装着後の指差し確認 | |
セルフビレイ(自己確保) とり忘れ | 仮荷重テスト時でのセルフビレイの徹底 | |
ロープの切断 | ロープの傷みを日常的に点検する 岩角等への接触を避ける 接触する場合はロープガードで保護する ロープにかかる荷重の分散、移し変えを逐次おこなう | |
落石・落下物 | 自分のロープの接触・振動 による落石の誘発 | 落石しそうな浮石(群)を避ける下降ルートをとる 除去できる浮石は除去しながら下降する |
上下作業時の落石被害 | 上下作業にならないように、連絡を緊密にする 遠景マン(支援要員)による監視 下方を通過せざるを得ない場合は連絡を取り合い、迅速に通過する | |
上方に侵入した第三者 (調査チーム員以外)による 落石誘発 下方に侵入した第三者への 落石被害 | 第三者の作業範囲および上方・下方への侵入禁止の事前確認の徹底 侵入者を発見次第、警告し、作業は中断し危険回避動作をとる 遠景マン(支援要員)による侵入者の断固阻止 | |
通行人、通行車両への落石 被害 | 通行規制、ガードマン配置、安全ネット設置 | |
所持品の落下による被害 | 所持品は原則としてすべて、ヒモなど体につなぐ |
スタティックロープ(長さ30〜200m、径8〜11mm、破断強度は2t強)
ロープバッグ等
ヘルメット
ハーネス
下降器(ディセンダー、RIG)
登高器(チェストアッセンダー、ハンドアッセンダー)
アブミ
スリング
カラビナ
ロープガード
無線機等
カメラ(デジタルカメラ等、予備機も携行)
筆記具
図面携帯用バインダー
クリノコンパス
デジタル高度計
巻尺
FRP製赤白伸縮ポール(写真撮影用スケール)等
コアマシン(乾式、湿式)
コアビット(φ32〜100)
ハンマードリル
損傷度合が一目瞭然で理解できるアングルの写真を撮るべくロープを操り、撮影位置を工夫し、広角(もしくは、つなぎ写真)撮影します。
この際、写真スケールとして赤白ポールをうまく写しこみます。
また補助的な写真として、亀裂状況がよくわかるものや、位置関係がわかるように隣接する損傷等を写しこんだもの、さらに遠景マンが撮影する損傷とクライミング調査員が共に写りこんだ写真等も活用できます。
伸縮赤白ポールなどを使って損傷範囲、規模を計測します。
マーキング仮番号をペンキでスプレーしたうえで、写真に写しこむと、整理上、便利です。
位置の特定精度ロープに沿わせた巻尺を使った簡易横断測量をしながら調査するもので、損傷等の位置は、比較的正確に特定できます。
また、遠景マンからの見通しがよければ、さらに精度があがります。
断面図のポイントは、代表的な断面位置の的確な選定です。
必ずしも調査ルート(測線)沿いとは限りません。
損傷ごとに、状況がよくわかるように、写真カルテや写真台帳にまとめます。