ロープアクセス技術指針

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ロープアクセス技術指針

ロープアクセス技術協会-各種指針より (印刷可能なpdfはこちら)

はじめに。 

指針策定の目的

ロープアクセス技術(略称SRTシングルロープテクニック)の日本国内での正しい発展のために策定しました。 大前提となるのは安全です。 順次改定し公表いたします。 

ロープアクセス技術の定義

ロープを主体的・積極的に活用して、難所・高所に容易・迅速・安全にたどり着く技術のことです。 

指針策定の背景

近年におけるロープアクセス技術の国内での急速な普及にともない、安全のレベルを高度に維持・発展させる必要が発生しました。 

ロープアクセス技術のルーツ

ロープアクセス技術は、竪穴洞くつ探検のために欧米で開発され発展してきたもので、日本でも洞くつ探検者(ケイバー)達がその技術をいち早くとりいれていました。 最近になって建設関係などの産業界でロープアクセス技術の有用性と安全性が知られるようになり、ロープアクセス技術のニーズが急速に高まってきました。 

ロッククライミングとの相違点

最大の相違点は、ロープを万が一の際の命綱と位置づけるロッククライミング技術に対して、ロープアクセス技術では、ロープを主たる移動手段として積極的に利用する点にあります。 当然、使用する技術や器材も大幅に異なります。 またロープアクセス作業にロッククライミング技術・器材を安易に流用することは、作業性が劣るだけでなく安全上、問題が大きいので禁止します。 

欧米との相違点

欧米のロープアクセス技術との大きな相違点のひとつは、バックアップロープの使用の有無です。 欧米ではバックアップロープの使用が大前提とされているケースが多いようです。 一方、日本ではバックアップロープは使用されるケースが稀のようです。 理由としては、日本ではロープアクセス技術が、岩盤やコンクリート構造物の“調査”のニーズのもとに発展してきた経緯があり、調査で求められる迅速・自在な移動を安全に行なうには、ロープはバックアップロープがない(メインロープのみ)ことがむしろ格段に安全なことが多い点にあります。 欧米でバックアップロープの使用が大前提とされている理由は、日本のような“調査”ではなく、建設工事やメンテナンスなどの“作業”でのニーズが圧倒的に多い点にあるようです。 今後、ロープアクセス技術の普及と共に、日本でも建設工事やメンテナンスなどでの“作業”でのニーズが増えるのは確実で、バックアップロープを使用するケースが増えることも予想できます。 

バックアップロープ使用のメリット・デメリット

メインロープ以外にもう一本、バックアップロープを使う最大のメリットは、どちらか一本が切れても、もう一本があるので安全である(ように思える)点です。 建設現場やメンテナンス現場のように、一箇所に停止したままでの作業や、単純な上下移動に限定される作業に適しています。 一方最大のデメリットは、岩盤やコンクリート構造物などの調査のように、迅速・自在な移動を求められる場合、バックアップロープの使用は、ロープワークを煩雑にし、作業性を阻害し、その結果、安全上、大きな問題が発生することになる点です

法律上の見解

ロープアクセス技術は法律的に問題がないとの見解が一般的です。 具体的には労働安全衛生法第五百十八条作業床の設置等・・・に示されている「事業者は、高さ二メートル以上の箇所で作業を行なう場合において(中略)労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない」の「安全帯を使用させる等」にロープアクセス技術で使用するハーネスなどが相当するとの労働基準局見解です。 実際、法律よりも厳しい社内安全基準を策定している大手ゼネコン各社での実績も多いです。 

安全には定評のロープアクセス技術

無事故の実績

歴史が浅いこともありますが、国内での事故例は皆無です。 汎用的に使用されている欧米でも、事故例は極めて少ないようです。 

安全な理由

  • もともと技術的に、事故、とくに墜落事故の可能性が極めて低い上に、安全確保の厳しいルールが多く課されています。 
  • たとえば体を確保するロープには常にテンションがかかっており(張った状態で)、墜落したくてもできない状態が維持されます。 
  • また、「2点確保の原則」などにより、何重にも安全を確保しており、仮に基本動作を誤っても事故には至らない仕組みになっております。 
  • さらに、ロープは複数の支点に結束するだけでなく、頻繁にリビレイやディビエーションなどで荷重を架け替え・分散させ、安全を確保しています。 

ロープアクセス技術の修得

技術の修得

  • すでに確立した技術であり、技術自体は正しく実践すれば全く安全です。 
  • しかるべき指導者のもとで修得することが大前提です。 
  • 独学や、アルパインクライミング技術の安易な流用は危険です。 

教本

代表的な教本は『SRT in Japan 2』です。 そのほかにも、参考になる図書があります。 

資格制度

ロープアクセス技士資格(ロープアクセス技術協会)

  • ロープアクセス技士レベル1(初級)基本技術を修得済み
  • ロープアクセス技士レベル2(中級)
  • ロープアクセス技士レベル3(上級)

講習の開催

  • 初心者を対象に随時開催(同協会)
  • 思い出し講習も随時開催(同協会)
  • 安全教育の徹底。 不適格者の排除。 

資格更新

初回1年、以降3年ごとに更新。 その際にレスキュー訓練、もしくはロープアクセス技術実務経験の申告が義務付け(同協会)

現場作業における安全管理体制

作業体制

  • 作業チームは2名以上(ひとり作業禁止)で、万が一のレスキュー体制も前提に編成します。 
  • 指揮系統はチームリーダーに集約し、安全判断を統括します。 
  • 同時に、各チーム員は、独自の安全判断のもと行動し、チームリーダーへの盲従は禁止します。 
  • チーム員のうち、ロープアクセス作業に従事するものは、ロープアクセス技士の資格を有すること。 

技術・器材

ロープアクセス作業で使用する技術や器材は、所定のものに限定します。 とくにアルパインクライミング技術・器材の安易な流用は、安全上、禁止します。 

装備の管理

個人装備
  • 個人装備は各個人が責任を持って管理・保管
  • 落下させるなどして損傷の疑いの生じた装備は即、廃棄すること。 
共同装備
  • ロープなどの共同装備は第3者の出入りしない部屋(できれば施錠)に、直射日光が当たらない状態で保管
  • 日常的に点検を実施、損傷や劣化があれば即、廃棄すること。 

天候・夜間

  • ロープアクセス技術はどんな悪天候下や暗闇でも全く安全に作業を進めることのできる技術ですが過信は禁物です。 
  • 悪天候下での作業や、天候の急変が予想される場合、予めしかるべき作業体制・装備を万全にすること。 
  • 暗闇、夜間作業、あるいは夜間に及ぶ可能性のある作業の場合、ヘッドライト等の照明器具を故障に備えて2セット以上携行すること。 暗闇での電池や電球の交換等は無理です。 

事故防止チェックリスト

表5-1墜落事故および落石・落下物事故の防止:原因と対策

使用する器材の注意事項

使用器材の指定

  • ロープアクセス技術に採用された所定の器材を使用すること。 
  • ロッククライミング用の器材(ロープ、下降器等)の安易な流用は禁止
  • ニセモノに注意。 そっくりなニセモノが出回り始めたようです。 

ロープ・ハーネス・スリング等の繊維製品

禁止事項
  • 踏んではいけない!損傷を防ぐ以上に、“精神論”の問題です。 
  • 酸☆厳禁電池、バッテリーの滲みだし液に要注意!バッテリーと同梱しての運搬禁止。 
  • 紫外線☆要注意日光の当たるところでの保管は禁止。 
  • 熱☆要注意くわえタバコ論外。 下降時、速く降りすぎると下降器に発生する熱でロープが溶けます。 1m下降するのに2秒以上かけること。 速度違反厳禁。 
  • 経年劣化に留意。 最長5年で全廃棄処分すること。 全く使用しなくても製造から3年で、強度は半減します。 使用頻度が高いものは、早めに廃棄。 傷んだものは即廃棄。 
  • 泥、砂汚れに注意。 泥や砂が付着したまま使用すると、繊維が傷み、寿命が短くなります。 汚れたら、洗おう。 
  • 溶剤に注意。 合成繊維製なので溶剤の種類によっては溶ける可能性があります。 
メンテナンス
  • 洗う際は中性洗剤を使い、たらい(もしくは浴槽)でやさしくもみ洗いする。 ドラム式の洗濯機も可。 羽がくるくる回る旧式の洗濯機は不可。 
  • 体温以上のお湯不可。 
  • 泡が消えるまで、何度か水を入れ替えながら、良くすすぐ。 
  • 柔軟剤に浸す。 
  • 乾燥は陰干しで(直射日光禁止)
  • 風通しの良い冷暗所に保管

カラビナ・アッセンダーなど金属製のギア類

注意事項
  • 落としたギアは、廃棄。 2m以上の高さから落下したギアは、落下の衝撃で金属に微細な亀裂が生じている可能性があるので迷わず廃棄すること
  • 早めに買い替え。 ギア同士あるいはロープとの摩擦でギアは徐々に磨耗し、本来の機能を果たさなくなります。 
  • 借りる、もらうは禁止。 過去にどのように扱われたか分からないギアに命を預けますか? ひょっとしたら落としたカラビナかも・・・・・。 
メンテナンス
  • お湯につけて、歯ブラシ、つまようじなどで細部の泥砂をよく落とす。 
  • よく振って水気を飛ばす。 
  • 日陰で乾燥
  • 稼動部にWD-40などの化繊を劣化させないタイプの潤滑剤をさす。 潤滑剤としてよく使われている呉工業のKURE5-56は化繊を劣化させるタイプなので使用禁止

ヘルメット

  • CEもしくはUIAA規格品に限定
  • 耐用期限が比較的短く要注意
  • 現場状況に合わせて、開口部(換気)のないヘルメットの使用も要考慮。 
  • 建設現場用のヘルメット(いわゆるドカヘル)は脱落しやすいなどの理由で使用禁止

下降器

  • オートストップ機構(手を離せば止まる)が装備されているもの(STOP、RIG)に限定。 
  • ロープにキンク(よじれ)が生じるもの(エイト環等)は使用禁止。 

服装

  • 長袖・長ズボンを着用。 袖をまくり上げてもよい。 半そでや短パンは禁止。 
  • アンダーウェアの素材は、体温調整を前提に選択すること。 
  • 雨天時はカッパを着用。 ポンチョは禁止。 
  • 靴は現場条件に合わせてスパイク地下足袋やトレッキングシューズなどから選択する。 
  • グローブは丈夫な素材のもので、指先がむき出しのものが使いやすい。 
  • 長い髪の毛は下降器に巻き込まれる危険(ヤバイ!)があり、束ねて固定するなどの工夫をすること。 

技術上の注意事項

覚えるべきノットと注意事項

  • エイトノット(基本、ダブル下降時のロープジョイントに使用)
  • ダブルフィギュアエイトノット
  • ラビットノット
  • プーリン、もやい結び
  • インクノット・マストノット・クローブヒッチ
  • インクノットを併用したもやい結び
  • プーリンオンアバイト
  • アルパインバタフライ
  • ダブルフィッシャーマンズノット
  • ブルージック
  • テープベント、ウォーターノット
  • イタリアンヒッチ、半マストノット、ハーフクローブヒッチ
  • フォロースルーエイトノットによるロープジョイント

事故の原因と対策

墜落(滑落・転落)事故

ロープの未使用
  • とくに自然斜面などでのピッチヘッドアプローチにおいて、ロープを早めに使い始めること。 緩い斜面でも少しでも不安を感じれば、迷わずロープを使いましょう。 
ロープ固定ミス
  • 結び目をよく確認すること
  • 結束作業中には話しかけない
  • 結束後の指差し確認
下降支点の脱落
  • 支点位置の確実な選定。 
  • 支点は2点以上にとる(2点確保の原則)。 
  • 仮荷重テストの確実な実施。 
下降器やハーネスの誤装着
  • 装着作業中に話しかけない。 
  • 装着後の指差し確認。 
セルフビレイ(自己確保)のとり忘れ
  • とくに仮荷重テスト時。 セルフビレイを確実にとる。 
ロープの切断
  • 洗浄、保管などの日常メンテナンスを確実に実施
  • 作業前にロープチェックをおこない損傷や劣化のないことを最終確認。 
  • 切断の直接原因となるエッジ(岩角など)とのこすれ(接触)は、リビレイ、ディビエーション、ローププロテクターなどの中間セットで回避する。 
  • ロープアクセス技術に熟練するまでは太め(10mm以上)のロープを使用。 

落石(落下物)事故

所持品の落下

所持品は原則として、すべてヒモなどで体につなぐ。 

自然落石(およびコンクリ片などの落下物)

風や動物により発生。 不安定度の高い浮石・転石などの下方には入らないようにします。 落ちそうなものは下降時に片っ端から落としながら下降します。 現場での制約条件等で落とすことができない場合は、下降ルートを変更し、それでも解決できない場合は、作業を中止します。 

自分のロープが誘発した落石(落下物)に自分が当たる。 

ライン取りを工夫し、ロープが浮石に接触しないように注意深く下降します。 落とせる浮石等は落としていきます。 

他者が発生させた落石(落下物)に自分が当たる。 

上下作業は厳禁です。 チーム員同士、無線等で連絡を取り合い、お互いの位置関係を把握します。 チーム員以外の上下方への立ち入りも禁止です、

自分が発生させた落石(落下物)が他者に当たる。 

同上

参考文献

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